My小金井「今月のスポットライト」 第46回

★小金井から全国に発信する出版社 ネット武蔵野

季節はいよいよ夏休みです。書店では、子どもには夏休みの課題図書、大人には各出版社が夏に向けて選んだ文庫本が店頭を賑わしています。今や秋だけではなく、夏から読書の季節なのです!今回のスポットライトでは、小金井から全国に、本を通じて情報を発信している出版社を紹介します。


■代表は、本を作り続けて50年余の大ベテラン

武蔵小金井駅北口、長崎屋の横を入って「ムサコ一番街」をしばらく歩くと、一階にカイロプラクティック、二階に歯科のあるビルが見えてきます。このビルの四階に、「ネット武蔵野」はあります。

代表の塩澤さんはかつて教科書会社で有名な光村図書で約40年、国語や美術の教科書などを作り、その後、関連会社の光村教育図書のトップとして約10年間、子どものワーク ・ドリル・ビデオ、絵本を作ることに携わってきました。

塩澤さんが独立を決め、それまで40年近く暮らしてきたこの小金井市でネット武蔵野を設立されたのは今から6年前、2000年の7月になります。

「地域の、地域による、地域のための出版」を目指し、ネットワーク、インターネットから「ネット」を、国木田独歩や徳富蘆花、大岡昇平といった文人に愛された歴史と文化のある「武蔵野」とをあわせ、ネット武蔵野という社名をつけた、とのお話でした。

本を出版する上で、ネット武蔵野が掲げるコンセプトは大きく分けて二つあり、「文化のメッセンジャー」と、「本はアート」という言葉に表すことができるとのこと。

「文化のメッセンジャー」というのは、地域の中にある知られざる歴史や文化などを掘り起こし、地域のより多くの人に発信していきたいという ところから生まれたコンセプトになります。

もう一つの「本はアート」というコンセプトは、 判型をはじめ装丁、本文中の写真・イラスト・文章といったブック・デザイン、さらには読みやすく分りやすい文章といった、視覚的にも内容的にも親しみが持てて芸術的な香りが感じられる本、という意味だそうです。

ネット武蔵野では、企画から編集・出版までを塩澤さんが徹底的にチェックし、校正もして一冊の本を作り上げていきます。

こうして作り上げられた本は、その完成度の高さを国内外から評価され、賞賛されています。

例えば、昨年6月に出版された絵本『ひとりぼっちの白い子 ラクダ』は、今年7月に東京ビッグサイトを会場として開催された本の祭典「東京国際ブックフェア」で行われた第40回・造本装幀コンクール展で、ユネスコ・アジア文化センター賞受賞、 さらにAPPA(アジア・太平洋出版連合)出版賞の児童図書部門で金賞と、なんとダブル受賞をなしとげました。

そんなネット武蔵野の本はいったいどういった構成になっているのか、最初に出版された本『蓮 ハスをたのしむ』を例に、その本作りの一端をお聞きしました。


ビルの入口にはのぼりが立っています


四階に着くと、入口に本の
紹介ポスターが貼ってあります


本の紹介ポスターの一つ。7月の
ブックフェアで、二つの賞を受賞した本です
 

つい先日の受賞ということで、社内には
お祝いの花が飾られていました
 

代表の塩澤昭典さん
本作りのベテランです
 
■地域から、全国に広がっていったネット武蔵野の本「蓮」


『蓮 ハスをたのしむ』 上製本\1,200


この本が作られるきっかけと
なった、蓮の花の連続写真


上部約3/4を画像、下部1/4を
文章、という構成が主です


「10歳から100歳まで」の名のとおり、
漢字にはほぼ全てルビがふってあります


社内には、今までに刊行してきた
本が飾られています


 

ネット武蔵野にとって最初の本である『蓮 ハスをたのしむ』。全32ページで構成されているこの本は、6〜7頁に出てくる連続写真が、塩澤さんの発想のヒントになったといいます。

今から7年ほど前、まだ光村教育図書にいたころのこと、塩澤さんは、蓮の文化を研究しておられた三浦功大さんが撮影されたという、一続きになった絵葉書を見せられました。

それが、左に一部を掲載した画像です。蓮が花開き、散るまでの四日間を定点で撮影した画像ですが、当時塩澤さんが見たものは、この画像が三つ折りの絵葉書仕立ての ものでした。

そのとき塩澤さんは、この画像の四日間を見開き四段に置き換え、時系列ごとに並べると、 四日間の蓮花の命が、視覚的にはっきりと理解できると思ったそうです。

その一年後ネット武蔵野を立ち上げ、出版第一号となったのが、この「蓮」です。さらにこの本は、「10歳から100歳に贈る――感動と発見の『えっ!本』シリーズ」というシリーズの第一作目でもあります。

早速本を開いてみると、目次に続いて、鮮やかな色彩のハスの花の写真が目に入ります。まず、視覚に強く訴える花の写真を紹介し、ハスの花がどういったものであるかをページ下部の文章で 説明しています。

文章には、小学校中学年程度の漢字が使われていますが、その漢字、ほぼ全てにルビ(ふりがな)が振られています。これは、教育関係の本を作り続けてきた塩澤さんが、シリーズに「10歳から100歳に贈る」、とリードを入れたように、どの世代の人にも読めるようにとつけたものです。

ルビを振ることで、本が好きな子なら10歳といわず小学校低学年からでも読むことができますし、ずっとひらがなが続く文章で、逆に読みにくいということもないので、大人が自分で読むほか、子どもに読み聞かせるのにも適しています。

本の内容は、最初に蓮の花を紹介し、次の項で上にも載せた連続写真を並べて掲載しています。これによって読者にインパクトを与えるつくりになっています。そこから先は、蓮の歴史や、子どもに向けてちょっと息抜きできる「ハスとあそぶ」ページ、ハスとスイレンの違いがわかるページ、府中の修景池など、近隣の地域や郷土史などに残る蓮の話、そして東京都内、日本国内の蓮の名所を示した地図などが、32ページの中に詰まっています。

最初は小金井や府中など、近隣地域が中心でしたが、忽ち全国で評判を呼び、今では、埼玉や滋賀、京都、鳥取などにある蓮の名所でも毎年取り扱われるようになり、次第に全国へ広まっていっているとのお話でした。
 

■本は、年齢を問わず楽しませてくれるもの

「10歳から100歳に贈る――感動と発見の『えっ!本』シリーズ」は、これまでに12冊を出版してきています。

シリーズ中には、地元の『名勝小金井桜の今昔』や府中にある『大國魂神社の歳時記 』、『京王電鉄ものがたり』など、近隣地域に密着したものから、糸操り人形芝居一座『結城座への招待状』など、ジャンルにとらわれず、幅広い題材から作り上げています。

このシリーズ2作目、『天使のピアノ 石井筆子の生涯』は、昭和3(1928)年に今の国立に移転・開設された、日本最初の知的障害者たちの福祉施設「滝乃川学園」の2代目学園長でもあり「日本の障害児教育の母」と謳われた、石井筆子の半生を書いたドキュメントになります。

この本を原作の一つとして、今年の冬に向けて映画「はだしのゲン」などを手がけた現代ぷろだくしょん/監督・山田火砂子により、常盤貴子 ・市川笑也主演で映画が製作されているそうです。映画の公式ページもありますので、気になる方はぜひチェックしてみてください!

ネット武蔵野では、このほかにも、音楽や詩などについて、美麗なイラストとともに書かれた正方形の外観も特徴的な「五感で読む『悠』シリーズ」や、小金井在住の英・米の女性による、絵も文も自作・自演のCD付き英語教材「英和絵本シリーズ」、ロシアやモンゴルなど、未だ日本ではマイナーな国の絵本を日本語に訳して発刊するなど、ネット武蔵野では良質の 絵本も出版しています。

新刊本だけではなく、ネット武蔵野では戦前・戦後の話題本の復刊もしています。これまでに、詩人・サトウハチローや、弁士・徳川夢声の著した本が復刊されました。

いずれも、今とはまた違った活気にあふれた時代を切り取ったこの本、年配の方が昔を懐かしんでも良し、若い方が今と地続きでありながら、全く違う印象を受ける時代を生きた人たちに触れるのもまた良しといった内容になっています。

読者の方たちも、ネット武蔵野の本に感銘を覚える人が多いそうで、今までに直接ご注文いただいた読者のうち、実に二割近い方たちから感想をいただいているそうです。

このことについて、塩澤さんは「実にうれしいことです。腐らない、古くならない本 、感動を呼ぶ本は、いつか芽が出るときがあると思います。ネット武蔵野も6年間種をまいてきました。映画化や受賞など、そろそろ収穫の時期が来ているのかも」と目を細めていました。

今後の出版予定は、10月に日本写真家協会会長の田沼武能氏がライフワークとして撮り続けてきた武蔵野の写真集 『田沼武能写真集 武蔵野讃歌 』(B4変型・252頁・上製本・函入・予価\9,000)、年内に『第九物語』『三木露風童謡集』(いずれもB5変型)を予定しています。これからも、読んでいて時間を忘れてぐんぐん惹きこまれていくような、良質の本を作り続けて欲しい、と強く思える一時でした。



「天使のピアノ」映画化タイトルは
「筆子その愛―天使のピアノ」
制作は現代ぷろだくしょん


制作発表時の一部報道。手前はサンケイ
スポーツ、奥は読売新聞武蔵野版です


社内の様子。ここで「ネット武蔵野」の
本は編集されています


お年寄りにおすすめの復刊本
『サトウハチロー僕の東京地図』
四六判¥1,470


『JAZZ 愛すべきジャズメンたちの物語』
五感で読む「悠」シリーズ B5判変型¥1,365


美術絵本『メルヘン・アルファベット』
※ロシア語のアルファベット絵本です
A4判変型¥2,300
 

☆ネット武蔵野さんからうれしいプレゼントのお知らせ☆

ネット武蔵野さんから『天使のピアノ』を3名様にプレゼント。
スポットライトを読んだ感想を添えて、11月30日までに賞品の応募フォームに入力してご応募ください。
(お申込は締め切りました)

※なお、ご応募は、ネット武蔵野さんまで行ける方に限らせていただきます。当選者の方には、地域ポータルサイト推進協会からご連絡を差し上げます。商品の引渡し期間は2006年12月20日までとなります。

★小金井から全国に発信する出版社 ネット武蔵野★

【住 所】 小金井市 本町 5-19-8
      アカシアビル 4階


【TEL】 042-382-5770

【FAX】 042-384-2080

【定休日】 土曜日・日曜日

【営業時間】  9:00〜17:00

【交 通】
武蔵小金井駅北口より
徒歩3分




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written by KOMO

いかがでしたでしょうか?

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